うちの父上のタバコ史

tobacco

 「ガンになろうがタバコは吸い続けてやるぞお!」

 これはウチの父上の口癖であり、そして彼の確かで力強い信念。彼の生き様といっても過言ではない確かで力強い信念なんだ。

 

 父上は大学時代にタバコデビュー。以降、片時もタバコを離すことはなかった。タバコは、まさに人生の相棒そのものだった。

 低タール、低ニコチンは軟弱専用といってはばからない。そんな父上の愛用はセッタことセブンスター、またはマイセンことマイルドセブン。

 ボックス(箱型)ではなく、ソフト派(紙パッケージ)。クシャクシャになった包みを、投げ捨てるように雑に扱う。ジッポなんて趣味じゃねーから100円ライター。綺麗に吸おうなんて意識は1ミリもねぇ。カッコ付けてんじゃねえぞカスども。

 それが父上のいう「オレ様の流儀」

 それは生き様、そして力強い確かな信念。

世の移り変わり

 風向きが変わったのは一体いつの頃だったか。タバコ広告の規制から始まり、世論がタバコの害について喧伝するようになった。

  • ガンの発生率を上げます
  • 循環器疾患、呼吸器疾患の発生率を上げます
  • 総じて、あなたの健康を害する可能性があります

 そんな世論を目の当たりにしても、家族から心配の声が上がっても、当の本人はどこ吹く風。

 「それがなんやっちゅー話。オレはガンになろうが血管切れようが、吸い続けてやるわボケェ!」

 と、タバコをくゆらせていた。

 「そんなん続けとったら、ホンマにガンになるやろ!」

 家族の声が強くなれば、煙を吹き付けながら豪語した。

 「ガンになろうがタバコは吸い続けてやるぞお!」

 

 その内、家族はあきらめたのか、このやり取りはなくなっていった。

 そして、そんな父上に転機が訪れる。

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