「ガンになろうがタバコは吸い続けてやるぞお!」
これはウチの父上の口癖であり、そして彼の確かで力強い信念。彼の生き様といっても過言ではない確かで力強い信念なんだ。

前回からの続き。そんな父上に訪れた転機とは。
健康診断で引っかかる
転機、といっても悪い方の意味での転機。
ある年に受けた健康診断で引っかかった父上。自分史には無かったライフイベントに、はた目からも動揺を隠せないのが一目瞭然。
タバコか酒か運動不足か食事か諸々の不摂生か。なにが原因で引っかかったかは不明だったものの、担当する医師が不穏な経過を報告する。
「胸部に気になる点があります。精密検査を受けられてはどうでしょう。」
胸部と聞いて父上の頭に「タバコ」による「ガン」のイメージがよぎった。長い長いタバコキャリアが生みだしたガンが、己の身に巣食っているのではないか。そんな疑念が脳裏をぐるぐると駆け巡った。
予約を取った精密検査日まで、気が気でなかった父上。不安と焦りが入り混じった気分を落ち着かせようとしてか、いつにもましてタバコの本数が増えた。
「ねぇ、ひょっとしてガンなの?」
「そんなわけねぇだろうがよ!」
まさか自分に限ってガンにかかるわけがないだろうという楽観論からの反動が、父上を追い詰めていた。
精密検査後
で、結果からいうとガンの前身ともいわれる「肺気腫」と診断された。幸いにもガンではなかった。
最悪のケースを想定していた父上は、肺気腫と聞いて今までの緊張状態から一転。ほっとしたのか、しばらく茫然自失となっていたようだ。
とはいえ、聞いたこともない肺気腫という病魔に侵されているのは事実。肺気腫はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の一種で、肺から上手く息を吐き出せない病気。特に、喫煙者の方は有意に発生率が高い。
そして、肺気腫にかかった父上のために手術日が決まった。